前回から2回に分けて、開業の登竜門である「公庫融資」をテーマにお話ししています。
今回はその後編で、公庫融資でプロが注視しているポイントを解説していきます。
融資のプロは、起業家の経歴書で「何を」見るのか
事業計画書には、必ず起業家の経歴を確認する欄が設けられています。
人は皆誰もが起業するまでに様々な経験を積んできますが、公庫は融資を審査する時、その人の経験や経歴が今後の起業にどう役立つかを確認しています。
事実、外食業において同産業における起業経験の有無は開業後に業績に影響を与えるという調査報告も存在します。
新規開業者を対象とし実態調査では、開業1年後の目標達成率の割合は、起業経験ありで約36%、そして起業経験なしの場合では約20%という数値報告があります。
もちろん、経験が無いからといって融資が全く受けられない訳ではありません。その場合は、経験不足をどのように補おうとプランニングしているのか、という点を重視して見られます。
例えば、専任の料理人を雇う必要があるとするならば、その人材を既に確保しているのか、その人との関係性や信頼関係を築けているのか(急に店を辞めたりする可能性)などを提出した履歴書や面接でのやり取りでチェックしています。
外食業での勤務経験があったとしても、それがこれから起業する内容と直接的関係がない業種態の場合、つまり、焼き鳥店の仕事経験がある方が独立してラーメン店を起業したい場合などは、その「動機」も聞かれるポイントになるでしょう。
また、勤務経験の期間なども重視されます。起業で融資を申請しているが、職歴がアルバイトで期間が2~3年程度では、融資をする側も心許ないというのが本音です。その点、店長などの責任ある立場を数年間経験していた方にとっては、その経験が融資をする側の信頼を得る大きな要素ともなります。
それだけ、マネジメント技術なども習得いる事が、事業を円滑に進める為にはとても大事なのです。
チェックされている、資金の見積もり方
起業・開業資金への融資は、その事業が失敗すれば個人に借金が残ることになります。そうしたリスクを最小限に留めるためには、開業資金の予算を慎重に立てることが何より大事です。
しかし、開業する起業家の中には、ざっくりとしたどんぶり勘定の見積もりも少なくないのが実情だといえます。
起業・開業資金は、大きく捉えて
「設備資金」と
「運転資金」に分けられます。
飲食店における平均予算は、設備資金が約760万円、運転資金が約110万円というデータがあり、この数値がある程度の標準値にはなります。(※もちろん、すべてにおいて適切な予算を意味する訳ではありません。)
開業資金の見積もりでよくあるパターンが、
先に調達資金を設定しておいて、それらを設備資金と運転資金に割り振って最終的な予算を決定することです。
しかし、それでは具体的に将来を見通した数字とはいえず、後になって追加融資が必要になる自体に陥ったり、本来省いてはいけない物のコストカットをしてしまう事態になりかねません。
そもそも、公庫を始めとする金融機関は、いわば「数字のプロ」です。その場しのぎの当てずっぽうな数字は瞬時に見破られてしまいますし、何より、その数字を持って決して安くはない金額の融資の申請にくる人そのものの人格が疑われることは言うまでもありません。
そうならない為にも、内外装費や厨房機器などは十分に業者と打ち合わせを重ねて予算の見積もりを立ててもらい、その際に過剰な投資がないか細部までしっかりとチェックし、予算を可能な限り「スリム化」することがとても大事です。その上で、開業資金を綿密に算出し、必要な融資額を決め、審査を受ける。
これが正しい順序で、融資をする側もされる側にとっても最も安心に繋がる道でもあります。
メニュー表で「臨場感」を持たせる
世の中に数多くある外食店の特徴を具体的に差別化し、その人の個性を示せるのが、「メニュー表」です。
メニュー表があればそのお店の
商品構成や
価格設定などが一目で分かり、
どのような客層を取り入れて、
どのように経営をしていきたいのか、現実味のあるイメージで説得性が格段に増します。
そこに店舗の看板商品の写真と説明文といった商品サンプルが加われば、融資担当者へ店のセールスポイントをより明確に示すことができます。
同様に、店舗の外装・内装造作のイメージが分かる資料があると、担当者に業態コンセプトなどもだいぶ伝わりやすくなります。もしも店舗のラフデザインなどが無いようであれば、自分が頭の中でイメージするものにより近い、既存する他店の写真でも大丈夫です。
まだ準備が完全に整っていないものであっても、明確な意思をもって伝えようとする熱意と誠実さの姿勢も、評価ポイントとして見られているところです。
また、出店地域の動態調査(店の前の通行量、物件の半径100~200m圏内にどのような店があるかのマップ資料等)に関する資料も、その事業に掛ける熱意が伝わると共に、融資担当者が事業の成功確率を計る上で参考になります。
融資のプロが求める事業の見通し方
起業・開業した店が、どれだけ売上げを上げ、利益を得ることができるのか。
それが事業の「核」部分になるのですが、多くの融資に携わってきたプロ達の率直な意見では、「見通しが甘いケースが多い」というのが金融関係者の共通認識です。
売上げ予測を立てる上で大事なのは、そこにどのような‶根拠〟があるかを十分に検証しておくことです。
例えば売り上げ予測が、
「店舗規模25坪で月商300万」
など過去の経験による感覚的数値では、残念ながら第三者への説得性はありません。
「客単価×席数×回転率」で日商を算出し、そこに曜日ごとの集客の変化などを加味して週商をだします。
それらの積み上げで月商を導き出す必要があるのです。
そうすることで想定客単価を確保するための商品構成、回転率を上げるための客席構成、予測客数に基づいた人員配置といった課題が具体的に浮かび上がってくるのです。それらの課題をクリアした事業モデルを組み立てた上で経費を算出し、収支予測を立てるのです。
公庫では、小企業の経営指標にまとめられた一般飲食店の経営指標をもとに、そうした収支予測に妥当性があるかなどを検証しています。
売り上げ予測については、
・従業員1人当たりの売上高(★1)や、
・店舗面積3.3㎡(1坪)当たりの売上高などと比較して過大すぎないか、
という点を確認します。
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(★1)従業員が1時間あたりに得る売上高を算出したものを人事売上高と呼びます。
「全従業員の労働時間÷売上高」によって算出し、理想としては、4,000円以上になることが望ましいとされています。
もちろん、数値が高ければ高いほど生産性は優れていると言えますが、高ければよいということではありません。数値が高すぎる場合は、顧客満足を得られるようなサービスがきちんと伴っているかを確認する必要性も出てきます。
店舗の売上げを把握した上で人事売上高の目標値を設定し、そこから逆算してシフトの調整等を行う方法も効果的でしょう。
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また、経費については経営指標では原価率35.5%、人件費率34.5%。外食業ではF/Lコストは60%以内が健全経営の指標値と言われていますが、店の業態や経営者の考え方(食材コストを重視するのか、人件費を重視するのか等)でそれぞれの目標値は変わってきます。ですので、これらの標準数値から外れていたとしても事業計画に妥当性がないと判断されるわけではありません。
ただ、開業当初はどうしても集客が不安定であり、その分経費も高くなりがちです。そうした実績を把握し、自身の事業モデルの特性を考慮した上で、各種の経営数値を算出できていることが大事なのです。
起業すること、店を持つこと。
これは大きな夢を叶える瞬間であると同時に、新たな挑戦の連続、スタートを切ったともいえます。
そしてその夢を資金面でサポートする金融機関は、その夢を事業計画書をもとに融資可否を決定します。つまり、内容が整理されていない事業計画書は意図が正しく伝わらず、金融機関も判断が下せないのです。
希望額を減額された方々の中には、単純にこれらの事実を知らなかっただけで、本当はずっと頑張って資金を貯めてきた方もいたはずです。
もちろん、融資の担当者によってもやり取りの流れや審査の厳しさは変わってきますが、少なからず事前にマイナスになるポイントさえ避けていれば、大きな損を面食らうことは回避できるはずです。
ひとりでも多くの人が、長年の夢を叶えて、
ご自身の思い描く理想経営にできるだけ早く近づくことを願っています。
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