心理的瑕疵のある賃貸物件~後編:告知義務の実態と、ワケあり物件の見分け方~

心理的瑕疵のある賃貸物件~後編:告知義務の実態と、ワケあり物件の見分け方~
前回は、事故物件・瑕疵物件の実態についてお話しました。


今回はその続きで、
・告知義務の範囲
・瑕疵物件に入居しないために気を付けること

を中心にお話したいと思います。


前回のブログでも少しお伝えしましたが、事故物件と呼ばれるものの代表格に「自殺」「他殺」「孤独死」などが挙げられます。もちろん、事件性の度合いによってもまちまちなのですが、一般的に、他殺>自殺>孤独死という順で、告知義務に値する深刻度が変わってきます。つまり、これらの死因によるものであれば、告知義務が発生するとみるのが一般的解釈です。

しかし、中でも「孤独死」は事故扱いにするかどうかの基準が一段と曖昧です(高齢者が一人で自然死後、帰宅した家族によってすぐに発見された場合などは孤独死ではなく自然死扱いの場合が多い)。

事故物件扱いにするかどうかは各不動産会社によって解釈が様々で、法律で厳密に決められた基準というものがありません。言えるとすれば、「一般の感覚の人間がその事件・事故の話を聞いて嫌な不快感を覚え、その話を聞いて物件の契約をするかどうかの決め手になるような大きな要素であれば、事故物件といえる」ということです。

この事故物件(正式には心理的瑕疵(心理的な瑕疵(=欠陥)のある)物件)には、入居しようとする人に事前にその事実を伝えなければならない「告知義務」というのが義務付けられており、主にその義務を負っているのは物件を扱っている仲介不動産会社です。

しかしここで落とし穴になってしまうのが、「告知義務の期間」です。


規定を持たない「告知期間」
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告知義務はあるものの、その期間についてもやはり明確に法律に定められているわけではありません。

この事故・事件が起こった日からいつまでの期間を「告知義務」と規定するのかは、家主の意向・管理会社や仲介会社の裁量に任されているケースが多いのは紛れもない事実です。例えば、事件・事故後に一度別の誰かが入居したという事実を何回か繰り返したのち、その事件は「過去」のものとして告知をしないケースを取っていることもあり得るかもしれません。

また、同じように事件や事故が起こった物件だとしても、その物件の持つ特徴で告知義務の期間の長さが変わってくることもあります。

例えば、主に単身者向けのアパートやマンションの室内で起こった自殺事件であれば、さほど月日も経たずして告知されなくなるかもしれません。

しかし一方で、地域に長く住まわれている方々が多く、ご近所付き合いが頻繁な住宅街で起こった自殺事件については、その事件について告知されるであろう期間が長くなることが予想されます。

同じ自殺事件なのに、なぜこのような違いが起こるのか?
そのカラクリはこうです。

前者の単身向けアパートで起こった事件であれば、元々あまりご近所付き合いが少ないため噂も立ちにくく、短期間で人が入れ替わり続けていくうちに、同時にその事件があったことも短期間で風化していってしまいます。

それに対して後者の場合は、

ご近所さん同士のお付き合いがあること + その地域を離れる人が少ないこと = その事件を記憶している人数が多い(噂が消えにくい)

という図式が成り立ちます。そのため、数年経ってその事件のことを知らない新しい人が越して来たとしても、いずれ地域の誰かから噂を耳にするであろうことは予想でき、きちんと契約前にその事件についての告知義務がなされていなければ、後々に大きなトラブルに発展することは目に見えています。

もちろん、これは田舎なのか大都市なのかによっても期間設定の基準が変わってきます。つまり、その都度物件の状況を見ながら告知する期間を模索しているというのが不動産業界の現状です。

事故・事件発生から一定の期間が経過して告知しないこととする場合においては、一般人の感覚で「入居することに抵抗がない状態かどうか」という点が判断材料になるため、

①事件・事故の内容
②経過した年数
③事件後に入居した人の数
④単身向け住宅か、ファミリー向け住宅か
⑤都市部か田舎の地方か


などを総合的に考量して決定していきます。


事件や事故だけが「心理的瑕疵」ではない
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ちなみに、事故物件やワケあり物件と表現されることの多い「心理的瑕疵」ですが、実際は「嫌悪施設(遺体安置所や養豚場など、イメージや物理的な匂い等で一般的に嫌がられる傾向のある施設のこと)が周辺にある」ことや、「指定暴力団等の事務所が近い」といったケースも含まれています。

しかし、これら「問題」と言われるものは全て、人によっては「とても気にする人」もいれば、「全く気にならない人」まで感覚は多種多様です。そのため、心理的瑕疵物件は借主側の考え方や受け止め方によって捉え方が180度異なることもあり、一概に「瑕疵だ!」と断定することが難しいものになります。

また、物件を探している人の中には一定数、

「ワケあり物件だけど、とくに変わった様子はないから住みたい」
「同じ地域の別の物件に比べて賃料が安いから、むしろ助かる!」


と、自ら進んで事故物件を探し、住み続ける人もいます。

事実、過去に一度起こってしまった事件や事故を完全になかったことにすることはできませんが、賃貸物件として可能性がゼロになったわけでは決してありません。

家主様の目線で考えるのであれば、これからその物件をどのように収益物件に変えていくかという視点に発想を利かせられる不動産業者に一度相談してみるのもアリだと思います。


心理的瑕疵物件を見破るコツ
心理的瑕疵のある賃貸物件~後編:告知義務の実態と、ワケあり物件の見分け方~
ここからは、「絶対に心理的瑕疵物件(事故物件)に当たりたくない!」という方のために、不動産業者視点の見分け方をお伝えします。


①新築物件を選ぶ
➡当たり前といえば当たり前の選択なのですが、これが最も安心できる事故物件の避け方です。できれば、新築以降にオーナー(物件所有者)が変わっておらず、管理会社もずっと同じである物件を選ぶことがポイントです。まずは、あなたが気になっている物件がその条件に当てはまる物件なのかどうかを仲介会社に確認して、さらに過去に事故物件相当のことが起きたかどうかを、ストレートに、自発的に質問することが大事です。(家主にとってもデリケートな問題なので、質問する際は横柄な態度ではなく、できるだけ穏便さを意識してください。)


②物件概要だけでなく、備考欄までしっかりと読む
➡物件を探す時、紙面やウェブサイト上で物件概要を確認できることがほとんどだと思います。しかし、物件概要に「事故物件」と記載されていることはあまりないので、心得ておきましょう。

比較的最近起こった事故物件の場合は、備考欄に「告知事項あり」や「心理的瑕疵あり」というワードが載っているケースがほとんどです。おそらく、具体的な理由までは記載されずに、詳細は直接お問合せください・・・という流れのものがほとんどですが、心理的瑕疵の有無を少し目立ちにくいところであっても最初から明示しているケースもあるので、気になっている物件の概要、特に下方の備考欄にまでしっかりと目を通しておくようにしましょう。


③周囲の家賃相場より格段に安価の場合
➡例えば、1Kのお部屋の家賃相場がおよそ6万円の地域に、同じ間取り条件で家賃が3万円、という相場の半額を切っている物件あったとします。このように家賃が通常の相場よりも極端にかけ離れている物件の場合、家賃を下げてでも人を入居させたい理由や、過去に「何か」があった事故物件の可能性があります。

しかし、元々の築年数が古かったり、交通の利便性が悪かったりなど、何かまったく別の理由で家賃が下げられていることもあるため、「低家賃=事故物件」とは必ずしも言い切れません。

また、10年~15年前くらいまでは、事故があった物件は家賃相場の半額以下に抑えて、ようやく次の入居者が決まるイメージでした。しかし今は事故物件の認知度やメリットが知れ渡ってきていることもあり、およそ3割程度の家賃値引きでも契約が決まる印象があります。今日話題になっている「ご高齢者の単身世帯」の増加から孤独死も決して珍しいことではなく、特段忌み嫌うことではない、という認識が強まってきていることも理由の背景にあるかもしれません。


④インターネット検索で調べる
➡インターネットによる情報収集が当たり前の現代、事故物件のこともインターネット上で調べる方法があります。事故物件情報を専門に取り扱っているウェブサイト利用が一番情報量としては豊富だと思いますが、物件記載がない場合は単純に更新が追い付いていないだけとも考えられるので、一番手っ取り早い方法として、「物件名+事故」というキーワードでインターネット検索を掛けることがオススメです。

全ての物件がそうとは言えませんが、目立った事件性のある物件であれば、一般の投稿者からの情報によって過去の事件の内容や事件のあった部屋番号まで特定されていることや、その事件の背景(元々どのようなトラブルがあり、その日一体何があったのか)までを細かく記録しているデータを見つけることもできるかもしれません。

しかし、この手の探し方には大きな注意が必要です。

まず、事件後に物件名自体が変更されていることがあります。その際は検索に引っかからないこともあり得ます。

次に、インターネット上に上げられている事故物件情報の中には、当たり前のようにウソの内容が堂々と掲載されていることもあります。全く無実の物件であっても、誰かが悪意を持って物件の評価を下げるためのウソの情報を書き込んだり、意図的ではないにしても間違った物件名で書き込まれたりしていることもあるため、確実に掲載されている情報を見極めることが必要になります。

そしてさらに。
物件を特定、もしくは特定できるだけの情報を含んだ嘘の書き込みや過大表現した投稿は、その行為そのものが法に触れ、告発される可能性を十分に秘めているという点を理解しなければなりません。それは元々の投稿された記事にコメントを残す形だったとしても、公の場で発信行為をしている事実に変わりはありません。確信の持てない事実や、第三者から人伝いで聞いた情報の公開はよく判断して行ってください。


その他、古い物件なのに内部だけがリフォームされて真新しい(➡事件痕を隠すためや、物件を明るいイメージに塗り替えるため一部だけを取り換える)など、プロの目から見た判断材料は多岐に渡りますが、このあたりは恐らくその類の専門書を読む方がいいでしょう。


家主目線でも、業者目線でも、そして多くの借主目線でも、できれば増えてほしくない事故物件。しかしこの世の中に建物や土地があり、そこで人が生活している以上、それが消滅することは絶対にあり得ないことです。

たくさんの情報が飛び交う時代です。
心理的瑕疵物件と向き合うのに大事なのは、まずは自分でできる範囲のことを調べる力と、調べたことを見極める判断力。そして、物件の詳細を知っている業者や家主にきちんと過去を伺う勇気を持ち合わせることが最も大事です。

中には、噂が勝手に大きくなってしまったものもあります。
実は怖い感じの事件ではなく、少し寂しい程度の小さな事故だった、というものもあります。
さらには、心理的瑕疵であっても霊的なものではなく、近くにゴミ収集所があるだけ、というパターンもあります。


コロナと掛け合わせるわけではありませんが、心理的瑕疵物件も、
「正しくおそれる」ことで、うまく世の中と共存していける物件になることを知っておいて頂けたらと思います。

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